※制度の内容や数字は2026年7月時点のものです。最新の情報は国税庁の住宅ローン控除のページでご確認ください。

繰り上げ返済、したい。でも「控除が終わるまで待った方がいい」とも聞くし……どっちが得なの?
いい質問だと思います。当時の私は、それすら考えていませんでした。
わが家は35年ローンを、100万円貯まるたびに全力で繰り上げて、完済まであと1年のところまで来ました(このあたりは繰り上げ返済の記事に書いています)。
でも実は——住宅ローン控除のことは、まったく考えていなかったんです。
この記事は、FP3級の学び直しで答え合わせをして分かった、「控除と繰り上げ、どっちが得かは時期によって入れ替わる」という話です。
先に結論を言うと、比べるのは借りている金利と控除の率。この2つの綱引きで決まります。私はそれを知らずに突き進んで——損をしていた時期と、大正解の時期がありました。
住宅ローン控除って、そもそも何?
住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて、払った税金が戻ってくる制度です(出典:国税庁)。
たとえるなら、「合計から1万円引き」のクーポンです。「対象商品だけ1割引き」ではなく、レジの合計金額からそのままズバッと引く。同じクーポンでも、効きがまるで違います。住宅ローン控除は、この「合計から引く」クーポンの税金版。納める税金から、そのまま引かれます。
私が借りた15年前は、年末残高の1%が、10年間戻る仕組みでした。計算上は、残高が2,000万円なら年に20万円。
——と書きかけて、手が止まりました。そんなに戻っていた記憶が、私にはないんです。
調べたら、ちゃんと理由がありました。
まず、戻るのは自分が納めた所得税まで。年収500万円くらいの世帯だと、所得税はざっくり年10万円前後です。枠が20万円あっても、納めた分までしか戻りません。
じゃあ残りは捨てていたのかというと、そうでもなくて。引ききれなかった分は、翌年の住民税から引かれていました(当時の上限は97,500円)。ただしこちらは、現金で戻るのではなく、翌年の給料から天引きされる住民税が、知らない間に安くなっている形。目に見えるお金が動かないので、明細をよほど見ていないと気づきません。
理由は、住民税が前の年の収入に対して、翌年請求される「後払い」の税金だからです。
つまり「年末に貰えた」と喜んでいたのは半分だけ。もう半分は、知らないところでちゃんと引かれていたんです。
正直に言うと、当時の私はここまでの仕組みを何ひとつ分かっていませんでした。ただ——
「年末に、お金が貰えた」
戻ってきた、というより、貰えた。そんな認識で、毎年ちょっと嬉しかった。それだけでした。
ここでの学び
- 控除の「枠」と実際に戻る額は別。戻るのは納めた税金までです
- 所得税で引ききれない分は翌年の住民税から(上限あり)。こちらは天引きが安くなる形なので、戻った実感がなくても、ちゃんと引かれていた可能性があります
- 何%が何年間かは、入居した年で決まります。今は原則0.7%×13年(省エネ基準を満たさない住宅は、2024年以降の入居だと対象外です。出典:国税庁 No.1211-1)

繰り上げ返済をすると、控除はどうなる?
ここからが本題です。繰り上げ返済をすると、控除には2つのことが起きます。
1つ目。残高が減るので、戻る税金も減ります。控除は「年末残高×率」なので、返せば返すほど、クーポンの値引き額が少なくなっていく。
2つ目。これは知らない人が多いと思うのですが——期間短縮型の繰り上げで、「返済を始めた月から完済までの期間」が通算10年を切ると、控除そのものが打ち切られます(出典:国税庁・質疑応答事例)。その年からずっと、です。
繰り上げには、2つのやり方があります。
- 「期間短縮型」……毎月の返済額はそのままで、完済を手前に引き寄せる
- 「返済額軽減型」……完済の時期はそのままで、毎月の返済額を軽くする
返済額軽減型は最後の返済月が動かないので、この心配はありません。危ないのは、期間短縮型を勢いよく重ねたときだけ。
わが家は35年を16年まで縮めたので、10年まではまだ余裕がありました。というより——35年で借りた人が10年を切るほど返すのは、正直そうそうできることではありません。
この落とし穴が現実に近いのは、もともと10年〜15年くらいの短めで借りた人と、退職金などまとまったお金で一気に返す人です。当てはまる人は、繰り上げの前に「完済がいつになるか」を確認してみてください。
注意
- 判定は「最初に返済した月から、短縮後の最後の返済月まで」が10年以上あるかどうか
- 10年を切ると、その年以降の控除は受けられません。あとから戻せません

どっちが得?答えは「金利と控除率の綱引き」
考え方は、思っていたよりずっとシンプルでした。手元の100万円を「返す」か「置いておく」かで比べます。
- 返すと……利息が「100万円×金利」ぶん減る。そのかわり、控除で戻る 1万円(100万円×1%) も減る
- 置いておくと……控除で 1万円 戻る。そのかわり、利息が「100万円×金利」ぶんかかり続ける
つまり、金利が控除率より低ければ「待つ」が得。高ければ「返す」が得。それだけなんです。
わが家の15年を、この式に当てはめてみます(わが家の実際の金利です。利息は100万円を1年置いた場合のざっくり計算)。

| 時期 | 金利 | 100万円の1年の利息 | 控除1%で戻る額 | どっちが得だった? |
|---|---|---|---|---|
| 変動の3年間 | 0.8%台 | 約8,000円 | 1万円 | 待つが得(差は年2,000円ほど) |
| 完全固定の時期 | 2%後半 | 約27,000円 | 1万円 | 返すが圧勝(差は年17,000円) |
| 10年固定の時期 | 1.3% | 約13,000円 | 1万円 | 返すがやや得 |
(※実際は残高や納めている税額によって変わります。将来を保証するものではありません)
金利の変遷が気になる方は、変動から固定に切り替えた話に書いています。
35年まるごと計算すると、面白いことが分かった
とはいえ「年2,000円」のような1年分の比較だと、実感が湧きにくいですよね。そこで、ローンをまるごと計算してみました。
前提は、2,000万円・35年・元利均等・期間短縮型。「2年目から100万円ずつ返し始める」のと、「控除が終わるのを待って、11年目に同じ額を返す」のとで、35年分の利息と控除10年分を全部足し引きした完済までの勝負です。
比べたのは、100万円を1回だけの場合と、100万円ずつ3回(計300万円)の場合の2パターン。まずは図解で、3回の場合の結果をどうぞ。金利によって、勝つ側がくるっと入れ替わります。

| 金利 | 100万円を1回だけ | 100万円×3回(計300万円) |
|---|---|---|
| 0.8% | 待つが勝ち。ただし差は約4千円 | 待つが勝ち。差は約1.7万円 |
| 1.3% | 早く返すが勝ち。差は約7万円 | 早く返すが勝ち。差は約17万円 |
| 2%後半 | 早く返すが勝ち。差は約40万円 | 早く返すが勝ち。差は約91万円 |
(※控除は旧制度の1%×10年で計算。実際は残高・税額・返し方で変わります)
見てほしいのは、勝ち負けの大きさです。金利が控除より低いときの「待つ」の勝ちは、35年戦っても数千円から2万円弱。ところが金利が高いときの「早く返す」の勝ちは、数十万円になります。
負けても小さく、勝てば大きい。
わが家の馬鹿正直な全力返済が「ほぼ正解」で済んだ理由は、この非対称にありました。
ここでの学び
- 分かれ目は「金利が控除率より高いか低いか」。これだけ覚えれば、自分で判定できます
- 今の控除は0.7%(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)。低い金利で借りている人ほど「控除期間中は急がない」が効く、と一般的に言われています
わが家の答え合わせ|「馬鹿正直」は半分正解だった
私は控除など気にせず、返し続けました。
「返すものは返す」
それだけでした。待つ、という発想がそもそもなかった。
答え合わせをすると、こうなります。変動の3年間は、待ったほうが得だった。ただし差は年2,000円ほどで、繰り上げできる貯金もまだ少ない時期。損はしていたけれど、小さな損でした。固定に切り替えてからは、金利が控除率を上回ったので、全力返済は大正解。トータルで見れば、馬鹿正直は「ほぼ正解」だったんです。
そして、10年の控除期間が過ぎたとき。ある年の年末調整で、何も無い。……あ、終わったんだ。10年って、早いなあ。仕組みも知らないまま、ずっと助けてもらっていたんですね。ありがたい制度でした。
でも、振り返ってみると思うんです。もし当時「待てば年2,000円得ですよ」と言われて、私は待てたか。たぶん、待てなかった。ローンが減っていく安心は、私にとって2,000円より大きかったからです。数字で決められない部分がある——それも正直に書いておきます。

よくある質問
Q. 控除の期間中は、繰り上げ返済しないほうがいいですか?
A. 一般的には、金利が控除率より低いなら「控除が終わるまで待って、まとめて返す」ほうが得と言われています。ただし私のように、減っていく安心を取る選択もあると思います。数字と気持ち、両方で決めていいところです。
Q. 繰り上げ返済のタイミングにコツはありますか?
A. 控除は12月31日の残高で決まります。なので、繰り上げるなら年明け早めにすれば、前の年の控除を満額受けてから返せる、と一般的に言われています。私は知らずに、貯まった順に返していました。
Q. これから借りる人も同じ考え方でいいですか?
A. 綱引きの考え方は同じです。ただし今の控除は0.7%×13年で、省エネ基準を満たさない新築は対象外になるなど、制度が大きく変わっています。制度自体は2030年末の入居分まで続くことが決まっています(出典:国土交通省・国税庁)。最新の条件は必ず確認してください。
まとめ|知らずに引いた正解より、知って選ぶ答え
- 控除と繰り上げの損得は、金利と控除率の綱引きで決まる。時期によって入れ替わる
- 期間短縮型で通算10年を切ると控除が打ち切り(出典:国税庁・質疑応答事例)。この落とし穴だけは知っておいてほしい
- わが家の馬鹿正直な全力返済は、答え合わせをすれば「ほぼ正解」。でもそれは、運が良かっただけ
- 数字で決められないもの(減っていく安心)も、ちゃんと勘定に入れていい
知らずに正解を引くのと、知って選ぶのとでは、同じ結果でも安心感がまるで違います。
タイムマシーンがあったら、あのころの私に教えてあげたいことが、たくさんあります。このブログは、そのつもりで書いています。私の主観でしかないけれど——こんな考え方もあるよ。それが言いたくて、今日も答え合わせをしています。
これから繰り上げを考えている人は、まず自分の金利と控除率を並べてみるところから始めてみてください。


