※保険の制度や数字は2026年7月時点のものです。最新の情報は日本損害保険協会などでご確認ください。
はじめに、お断りです。2026年7月28日に熊本で大きな地震があり、余震の続くいまも、大変な思いをされている方が大勢いらっしゃいます。心からお見舞い申し上げます。私が地震保険をやめる手続きをしたのは、この地震より前のことでした。そしてこの記事は、「地震保険はやめていい」と勧めるものではありません。入るときも、やめるときも、仕組みを知ってから選べるように——15年前に何も知らずに入った私が、いま調べたことを書き残すものです。

地震保険って、高いわりに本当に役に立つの?うちには要るのかな……
わが家は今年、15年入っていた地震保険を、5年ごとの更新のタイミングでやめました。
でも、この記事で言いたいのは「いらない」ではありません。
調べて分かったのは、地震保険が思っていたのとちがう保険だったこと。まずは、過去の地震で実際にいくら支払われたのか——数字から見ていきます。
地震保険は、1件あたりいくら支払われてきたか
地震保険の支払い実績は、業界団体が公表しています。支払額の大きかった地震を並べて、「1件あたりの平均」をこちらで割り算してみました。
| 地震(年) | 支払件数 | 支払総額 | 1件あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 東日本大震災(2011) | 約82.6万件 | 1兆2,891億円 | 約156万円 |
| 熊本地震(2016) | 約21.5万件 | 3,906億円 | 約182万円 |
| 福島県沖地震(2022) | 約36.4万件 | 2,523億円 | 約69万円 |
| 大阪府北部地震(2018) | 約15.8万件 | 1,242億円 | 約79万円 |
| 能登半島地震(2024) | 約12.7万件 | 約1,047億円 | 約83万円 |
(出典:日本損害保険協会の公表資料。能登半島地震は2025年3月末時点の報道。平均は総額÷件数の単純計算です)
どの地震でも、1件あたりの平均はおよそ70万〜180万円。
家が建つ金額では、ありません。

なぜ平均100万円前後なのか|仕組みは3つ
「少ない」と怒りたくなる数字かもしれません。でも調べてみると、これはそういう設計の保険でした。理由は3つあります。
① 地震保険は、火災保険の半分までしか入れない
地震保険は単独では入れず、火災保険とセット。しかも金額は火災保険の30〜50%の範囲と決まっています(出典:財務省「地震保険制度の概要」)。たとえば火災保険3,000万円の家なら、地震保険は最大でも1,500万円。満額出ても、同じ家は建て直せない——入口からそういう作りです。
② 判定は「骨組み」だけ。しかも4段階しかない
支払いは、損害の細かい査定ではなく、土台・柱・壁・屋根といった骨組みの壊れ具合で4段階に分けるだけです。
基準は、こうなっています。

たとえば地震保険1,500万円の契約なら、全損でようやく満額の1,500万円。家の中がぐちゃぐちゃでも、食器が全部割れても、骨組みが無事なら「一部損」の5%=75万円。それより軽ければ0円です(区分と支払割合の出典:損害保険料率算出機構・損保協会の認定基準)。

③ 実際の支払いは「一部損」が大半
東日本大震災では、支払い85万件のうち約7割(70.9%)が一部損でした。全損は4.9%(出典:内閣府の検討会資料・日本損害保険協会調べ)。つまり多くの人が受け取ったのは「契約金額の5%」で、これが平均156万円の正体です。
ここでの学び
- 地震保険は満額でも火災保険の半分まで。「全部出る」保険ではそもそもありません
- 判定は骨組みだけ・4段階だけ。「あんなに大変だったのに5%?」は仕組みどおりの結果です
「建て直す保険」ではなく「立て直すお金」でした
じゃあ地震保険は役に立たない保険なのか——そうではない、というのが調べたあとの正直な感想です。
地震が起きると、一度に何十万軒もの家が、倒れたり傷ついたりします。全員に建て直し費用の全額を約束したら、どんな保険会社も払いきれません。だから地震保険は国と保険会社が共同で運営して、上限を半分に決めて、査定をあえてざっくり4段階にして——そのかわり、速く・確実に払う作りになっています。実際、東日本大震災では約82万件に1兆円を超えるお金が支払われました。
「確実に」の後ろ盾は、国です。といっても、保険料をまけてくれる補助金とは少し違います。巨大地震で支払いが膨らんだとき、その大部分を国が肩代わりする約束(再保険といいます)になっているんです。用意されている枠は、1回の地震につき総額12兆円。そのうち約11.5兆円を国が背負います(出典:財務省・損害保険料率算出機構)。保険会社が倒れて払えない、が起きない仕組みです。
つまり地震保険は、家を建て直す保険ではなく、当面の生活を立て直すためのお金。避難先の費用、当座の生活費、引っ越し代。そのための70万円、100万円だと思えば、さっきの表の見え方が変わってきます。

もうひとつ、大事な役割があります。地震が原因の火事は、火災保険からは1円も出ません。地震で全焼した家を支えるのは、地震保険だけです。
役に立たない保険ではなく、役割がちがう保険。
これを知らないまま「家の保険」だと思って入ると、いざという時に「思っていたのと違う」が起きます。15年前の私が、まさにそうでした。
わが家の結論|知ってから、手放しました
わが家の地震保険は5年ごとの更新で、今年その案内が届きました。保険料は5年で9万円ほど。
ちなみに地震保険の保険料は、どの保険会社で入ってもほぼ同じで、都道府県と建物の構造で決まります。だからこの9万円は、あくまでわが家の県・わが家の家の場合。お住まいの県では違う金額になります。
これ、要る?
思い出したのは、FP3級の勉強で目から鱗が落ちたときのことでした。ここまで書いた仕組みは、ぜんぶテキストの「リスク管理」の章に普通に載っています。火災保険の半分まで。判定は4段階。国との共同運営。誰も教えてくれなかったけれど、隠されてもいなかった。明文化された、周知の事実だったんです。
そうだった。これはもう、勉強したことだった。
わが家は上限いっぱいの50%で入っていましたが、それでも出るのは「当座のお金」。そして、わが家にはもし住めなくなったら実家か賃貸に移る、というあてがあります。子どもたちは、いずれこの家を出ていきます。
当座のお金を自分の蓄えでまかなえるなら、うちの場合は、この保険料を手元に置くほうが合う——夫に話したら、「そうだね」と。それで、更新をやめる手続きをしました。地震の火事には火災保険が効かないことも、知った上での判断です。
繰り返しになりますが、これはわが家の事情での結論です。同じ結論になる必要は、まったくありません。
それでも、私が「要る」と思う人
15年前のわが家は、貯えがほとんどありませんでした。あのころのわが家なら——入っていて正解だったと思います。
- 貯えがまだ少ない人。当座の100万円を自力で用意できないなら、それを届けてくれるのはこの保険です
- 住宅ローンが多く残っている人。家を失ってもローンは残ります。当座のお金の価値が大きい時期です
- 被災したとき、すぐ使える現金が家計の生命線になる人
一般的には、家計に余力ができるほど保険の必要性は下がる、と言われています。要るか要らないかは、貯えと、行くあてがあるかどうかで家庭ごとに変わる——それが、調べ終えた私の答えです。
よくある質問
Q. 地震保険をやめたら、払った保険料は戻ってきますか?
A. 途中でやめる場合は、期間の残り分が「解約返れい金」として戻ります(日割りではなく決まった係数での計算です)。わが家は5年の満期に合わせて更新をやめた形なので、戻るお金はありません。満期でやめるなら返戻金は関係なし、途中でやめるなら残り分が戻る——この違いは覚えておいて損はないと思います。
Q. 地震で火事になったら、火災保険から出ますか?
A. 出ません。地震・噴火・津波が原因の損害は、火災保険の対象外です。そこを支えるのが地震保険、という役割分担になっています。
Q. 地震保険だけに入ることはできますか?
A. できません。地震保険は必ず火災保険とセットです。火災保険を見直すときが、地震保険を考え直すタイミングでもあります。
Q. 地震保険料は上がっていますか?
A. 上がってきました。2014年に平均15.5%、2017年から2021年にも3回に分けて合計約15%(東日本大震災などを受けたリスクの見直しです)。10年あまりで平均3割ほど上がった計算になります(改定の経緯の出典:損害保険料率算出機構)。直近の2022年の改定は全国平均ではほぼ横ばいですが、県によって上げ下げの差が大きい状態です。わが家も、更新のたびに高くなっていました。
まとめ|知ってから、選ぶ
- 過去の大地震で、地震保険の1件あたり平均は約70万〜180万円。支払いの多くは「一部損」の5%
- 地震保険は家を建て直す保険ではなく、生活を立て直す当座のお金。そのかわり速く、確実に届く
- 要る・要らないの分かれ目は、当座のお金を自力で用意できるか。家庭ごとに答えは違う
15年前の私は、仕組みを知らないまま入りました。今年、仕組みを知って、手放しました。どちらの選択も、間違いではないと思います。
こういう大事な仕組みは、誰も教えてくれません。でも、テキストにはちゃんと書いてある。勉強した人だけが知っているのは、もったいない。だから私は、わかりやすく伝える側にまわりたくて、このブログを書いています。
ただ——知ってから選ぶと、保険は「なんとなくのお守り」から「自分で選んだ備え」に変わります。更新の案内が届いたら、それが仕組みを知るいちばんのきっかけです。
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